映画『50年後のボクたちは』情報
2016年 ドイツ映画 93分 原題 Tschick
監督 ファティ・アキン
出演者
トリスタン・ゲーベル(マイク・クリンゲンベルク役)
アナンド・バトビレグ・チョローンバータル(チック役)
メルセデス・ミュラー(イザ役)
アニャ・シュナイダー(マイクの母)
ウーベ・ボーム(マイクの父)
映画『50年後のボクたちは』ネタバレあり感想
①少年たちのグローイングアップストーリー
とてもいい映画でした。14歳の少年たちのひと夏の冒険ストーリー。
ヴォルフガング・ヘルンドルフという方が書いた『14歳、ぼくらの疾走』というドイツの有名な児童文学を映画化したものなんだそうです。
こういう映画は、もちろん実際に多感な時期の子供たちが見ても色々感じるものがあると思いますが、
大人が見ても考えさせられると思いました。
なんというか、雰囲気だけ見ると明るく前向きな感じですが、実際彼らがおかれている状況は辛いものだし、
またそれが最終的にいい方向に変化するわけでもないのですが。
でも違った視点で物事が見れるようになる、ということがどれだけ大事かということを教えてくれる作品でした。
②主人公マイクは結構しんどい状況
主人公のマイクは14歳。
結構裕福な家庭育ちで、大きな家に住み物質的には恵まれています。
が、母親は定期的にリハビリ施設に入るほどのアル中、父親も堂々と若い女性と不倫中。
学校でも全然目立たず存在感がなくて、友達もいません。
クラスのほとんどが参加する人気者の女子の誕生日パーティにも誘われないほどです。
夏休みは誰もいない広いプール付きの家で、冷凍ピザ食べながらゲームしているような少年。
14歳にして、ある意味人生に絶望してるというか、諦めてる、というか、無邪気な子、というのとは程遠い状況にいます。
(←無邪気な子なんて、実際にはいないかもしれませんが(汗)。14歳にもなると、色んなものが見えてきちゃうかもしれませんから)
③あきらかに変な転校生、チックの登場
そんなマイクが、夏休み前に転校してきた、明らかに様子のおかしいチックという少年出会います。
チックはモンゴル系の方なんですかね?ドイツ映画ですので、もちろんヨーロッパ系の子が多い学校の中でアジア系のチックは、他の人と違う感じがする、というのは間違いなのですが。
それ以外にも、モヒカンヘアー、傍若無人な雰囲気、洋服センス、とにかく変わった転校生です。
そんな浮いてるマイクとチックが、ひょんなことから盗んだ車で旅に出ることになる、というお話です。
④甘くないラスト、でも希望のあるラスト
14歳の彼らが運転しているとことはもちろん他の大人のドライバーに目撃され警察に通報されたり、警察から逃げるために険しい道を選んで道なき道を進んだり、牧場で牛たちに囲まれて進めなくなったり、なかなか大変ですが、アドベンチャーみたいで楽しくもあります。
ですが、そんな旅も二人が捕まる形で終わりを迎えます。
結局チックは逃走して行方不明になります。
そしてマイクは旅中の色んな犯罪がばれて(車の盗難、無免許運転など)裁判みたいなのにかけらます。
旅を終えてもマイクのお母さんはアル中のままだし、むしろ父親はぶち切れて、マイクに飛び蹴り食らわせて若い女性と出ていくしと、旅に出る前と比べてもマイクの状況は何一つ良くなりません。
なのに不思議と感じるハッピーエンド感。
(個人的に、父親のキックシーン、それを受けての母親の絶叫は好きでした。すべてなしで許されるほど人生は甘くなかった、という感じで。)
マイクは
「現実はこんなものだ」
と常にどっか諦観して感情を抑えていて(そして本当にそんなものなのかもしれませんが(泣))、
でもそれは傷つかないためのマイクなりの防御策でもあるだろうと思うのです。
おそらく今後もそれは変わらないかもしれないですが、でも、この旅での自分を振り切った経験はマイクにとって一生の宝になるんだろうなと思いました。
たとえ50年後にチックとの再会は叶わなかったとしても。
願わくば、チックには年をとっても、あの靴で、あのジージャンを着て、あの不遜な感じで現れてほしいですけどね。
子供にも大人にもおすすめのロードムービーでしたし、本も読んでみたいなあと思いました!