映画『窓ぎわのトットちゃん』情報
2023年製作 日本映画 114分
監督 八鍬新之助
キャスト
大野りりあな(トットちゃん/黒柳徹子役)
役所広司(小林先生/小林宗作役)
小栗旬(トットちゃんのお父さん/黒柳守綱役)
杏(トットちゃんのお母さん/黒柳朝役)
滝沢カレン(大石先生役)
松野晃士(泰明ちゃん/山本泰明役)
映画『窓ぎわのトットちゃん』ネタバレあり感想
今回かなり内容がネタバレしてますので、未見の方はお気をつけください!
①とても良質な映画
正直YouTubeとかで噂を聞いていました。
『かなりいい映画だぞ』
と。
黒柳徹子さんは、もちろんスターなので知ってます。『徹子の部屋』とか、『ふしぎ発見』とか、もっと前でいうとベストテンの司会とか色々な番組に出演されてる大スターですから。徹子さん、現在91歳だそうです。(←凄すぎ)
トットちゃんという愛称が黒柳徹子さんのことだ、ということも知ってました。
ですが、窓ぎわのトットちゃんを読んだことはありませんでしたので、内容は知りませんでした。映画も
『徹子さんの自伝だよね』
ぐらいの軽い気持ちで観ました。
もうですね、大号泣しました。泣きすぎて頭痛くなっちゃいました。
毎回同じようなことを書きますが、泣ける映画=いい映画というわけではないと思うのですが、この映画はとてもいい映画で、人生で一度は見るべき映画と言って過言でないと思うですが、私はもう一回見るのはつらいです(涙)。
1つ言えることはアニメだからって軽い気持ちで観るものじゃないぞ!ということです。
②トットちゃんはお嬢様
時代的に戦争はもちろん影響してくるんですが、ストーリーはトットちゃんの小学校時代の思い出がメインなので、基本的に明るく楽しいシーンが続きます。
そもそもトットちゃんって、じっとしてられない、というか、いわゆるいい子ちゃんじゃなくて、今でいうと、もしかしたら発達障害とか言われちゃうタイプの子です。
しかも小学校を退学になってしまいます。(←昔ってそんなことできちゃったんだ、というのが一番の驚きですが。今って自主的に行かなくなることはあっても小学校退学とかないですよね?)
でもトットちゃんははっきり言ってお嬢様です。それもかなりのお金持ちの令嬢です。
お父様があの時代にバイオリニストで、お母様はそれはそれは大変おしゃれな洋装を着て、髪にはパーマネントをおあてになってらっしゃいます。
(ちなみに町中の人たちはほとんど地味な色の着物です)
お家でも、パンを朝食に食べたり、オシャレな洋館に住んでいて、明らかにほかの家庭とは違います。
トットちゃんが退学になっても、トットちゃんを責めるとか罵倒するということはなく、お母様は『あらあら、困ったわね~どうしましょう???』という感じで、ちょっとほっこりします。トットちゃんのご両親がトットちゃんに愛情を注いでるのが伝わってきます。
③油断してたらやられる
が!ほっこりして明るい映画だからって油断してるとやられます。
前述しましたが、もう一度見るのは結構覚悟がいる映画なんです!
小学校を退学になってしまったトットちゃんは、トモエ学園というかなり自由な校風の学校に転校します。
多分この学校に来ている子たちは正直みんなお金持ちの子だと思います。
創設者の理念が強い学校なんで、(←間違いなく私立)あの時代にそんな学校に子供を入れる親はかなり思想が強い文化人じゃないかな、と想像できます。
トモエ学園でトットちゃんは、泰明ちゃんというお友達ができます。泰明ちゃんは小児まひで右手と左足に障害があってうまく動かせません。
泰明ちゃんの設定分かった瞬間、正直嫌な予感しました。戦前のあの時代にこんなに体にハンデのある子・・・死んじゃうんじゃない?って。
個人的に私は、子供が死ぬとか、虐待されるとか、そういうのはつらくて見るのをあまり好みません。なんで子供がこんな理不尽な目にあわなきゃいけないんだって思っちゃうからです。(←まあ、この世界は理不尽なんですけども。)
なので観るのを避ける傾向があります。
この辺りで嫌な予感がしてちょっとドキドキしだしました。
劇中、トットちゃんが両親と行ったお祭りの縁日で、お母さんにヒヨコが欲しいってねだるシーンがあります。いつも優しいお父さんが
『あの子(ヒヨコのこと)は弱いから、たぶんすぐ死んじゃうから、そうしたらトットちゃんが泣くからだめ』
と言います。それでもトットちゃんがどうしても欲しいと駄々をこねて買ってもらいます。
しかしそのヒヨコは案の定すぐ死んじゃって・・・。
トットちゃんは勿論悲しみ泣きまくるんですけど、そんなトットちゃんに泰明君が
『ヒヨコはトットちゃんと過ごせて幸せだったと思うよ』
と言います。
こ、これは!確実に泰明君死んじゃうフラグ、ですよね???
というよりこの言葉を言いながら、
『泰明ちゃん、絶対自分とヒヨコを重ねてたよね』
と思ったら、もうつらくてつらくて(涙)(涙)。
小学生にこんなこと言わせるなよ~と思って涙が止まらないのです。
(書いていてもツライ・・・)
泰明ちゃんは死んでしまうのですが、ヒヨコが死んだときにわんわん泣いてたトットちゃんと、泰明ちゃんが死んでしまったときに泣くトットちゃんの変化。少女が大人になっていく、と言われればその通りなんですけど・・・。
『こんなこと小学生に体験させんなよ~!!!』
と泣きたくなっちゃうんですよ。
唯一の救いは、戦況がもっとひどくなる前に泰明ちゃんが亡くなったことですかね(これ以上つらい思いはして欲しくない!)。
でも泰明ちゃんが亡くなってから、泰明ちゃんのお母さんが初めて見せる涙にまた号泣。(しかもひっそりと泣く姿が・・・。お母さんもつらかったよなー。)
やはりもう一度見るには覚悟がいりますね・・・。
④多様性について考えさせられる
映画『窓ぎわのトットちゃん』は戦争始まる前ぐらいから始まって、トットちゃんたちが青森に疎開していく途中で終わる、つまりまだ戦争が終わらない状況で作品は終わります。
戦争が人物たちの生活に影響を与えてはきますが声高に反戦を叫んでいる映画、という感じではありません。
むしろ戦争に向かって、物の考え方が一つになっていく中で(贅沢は敵だ!みたいなやつですね)、トットちゃんの通うトモエ学園が色々な子を受け入れる学校なので、
『そうかー、この時代にもこういう素敵な考えの方たちがいたのね 』
と思うと、ちょっとほっとしたりもします。
そもそも、トットちゃん本人がまず浮いてるし、泰明ちゃんも体が不自由だからみんなに迷惑かけると気を遣ってあまり外で遊ばないんですけど、それだけではなく他にも成長が遅い子、とかいろんな子がいるんですけど、周りの大人が差別しないからか、そういう環境にいる子供たちは他の子たちを差別しないでありのまま受け入れていきます。
やっぱりそういう環境で育った子ってそういう風に育つんだなあと、大人から見ても多様性について色々考えさせられる映画でした。
何よりも
『そのままでいいんだよ』
と受け止めてくれるトモエ学園の校長先生の小林先生。実際にいらっしゃった方らしいのですが、素晴らしい先生だなあと思いました。(また、声を役所広司さんが演じられてらっしゃるのですが、声だけでも愛情にあふれた教育に情熱のある素晴らしい先生だな、というのが伝ってくる!)
『火垂るの墓』と並ぶ、一生に一度は見るべきアニメ映画だと思いました。